実は昨年末ちょっとしたマイブームがあって、出勤退勤時間のおおよそ1時間の間ひたすら日替わりで異演の第九を聴くということを繰り返していました。
そう、年末といえば第九。
由来に諸説あれど日本人にこれだけ愛されている曲というのも他にはなかなかありませんが、それと同程度に同曲異演盤が多いのもこの曲を措いて他にはないでしょう。
ということでクラシックこじらせヲタなら避けて通れぬ登竜門、フルトヴェングラー第9聴き比べ大会をやってみました。
「バイロイトの第九」として名高いものが有名ですが実は他にもかなり録音が残っており、そもそもバイロイトの第九も2種類あるし、新しいマスターは見つかるわリイシューも多いわでなかなかとっつきづらいというのが正直なところ。
今回は最近大好きな歴史的録音レーベル: Archipelとorfeoからこちらの6枚を。
CDの長さが74分になったのはフルトヴェングラーの第九が一枚に収まるようにという説もあるくらい、歴史的にもこの指揮者とこの楽曲というのは影響力があったのだなと再確認。
これは音楽を聴くだけじゃない、歴史を感じるんだ(どやぁぁぁ
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◆右下: 1937年 ベルリンフィル
録音年としては僕の知る限り最古のフルトヴェングラー第九。
録音はなかなか厳しいものがありますがかなり面白い。最後の発狂具合は一瞬目を開いた。
◆左上: 1942年 ヒトラー生誕記念前夜祭
この音楽が戦時中にあることを意識させられる貴重盤。演奏としてはそんなに悪くはない。が神懸かってるというよりはオーソドックスな演奏で聴きやすい印象。相変わらず最後はヤケ笑。
◆中央上: 1951年 バイロイト音楽祭
世に言う「バイロイトの第九」はorfeoレーベルから。第1楽章がブルックナーよろしく幻霧から開始し堂々とした貫禄ある名演。神格化されるのも納得なロマンティックさである。ちなみに盤によっては御大の足音も入っておりそれで泣けるとか泣けないとか。
◆左下: 1953年 ウィーンフィル ニコライの第九
バイロイト、ルツェルンなどに並びファンの中では人気のある「ニコライの第九」。バイロイトを経ているのでフルヴェン第九の良さは安定している。個人的には第3楽章のテンポ感がなんとなく好みな印象。
◆中央: 1954年 バイロイト音楽祭 リハ付
世に言う「"もう一つ"のバイロイトの第九」。
評論家: 吉田秀和が実際に聴き最高の管弦楽体験と称した名演。録音がそこまで良くない盤だがスケルツォの貫禄と終曲の爆音の対比が逆に面白い。orfeoレーベルから出ているのはこの演奏の最高リマスタリングということでそれも聴いてみたい。
◆右上: 1954年 ルツェルン音楽祭
現存する最後のフルトヴェングラーの第九ということもあり晩年の最高峰の演奏とも称される「ルツェルンの第九」。スケルツォは一番スケルツォ的に激しい。