流れ星の消える前に 2522880000
for Piano 10th Anniversary
「流れ星の消える前に」は僕にとって特別な曲かもしれない。
2010年10月に参加した創作集団必志組第17回公演『流れ星の消える前に 2522880000』のために創った劇伴曲だが、諸般の事情によりこの曲は独立したピアノ曲として完成させた。
2回目の演劇作品に付した音楽だがここに詰め込んだ熱量はちょっと別格のものだと思う。
「Tiny Seed」が起点だとすれば、この「流れ星」は早すぎた到達点、そんなイメージ。
明るく希望に溢れる曲を描くのが苦手なのだが、この曲はそんな僕から十二分に絞り出された「光」の音楽だから、なのかもしれない。
当時の舞台関係者たちからシャンデリアとも喩えられた豪華で明るい変ホ長調の第1主題と、憂いと悩みを持ったホ短調の第2主題からなる単一楽章の楽曲だが、今回は10周年ということでその諸般の事情で発表されなかった第3主題をトリオに配した特別版として弾き直した。
フィナーレで少し顔を出す第3主題を独立したパートとして復活させた格好だ。
なお余談だが第1主題はシューベルト:即興曲op.90-4のバリトン主題のイメージが強い。
変ロの三音から成る短い序奏から、変ホ長調の豪華な主要部に突入。
ヘ長調に転調後、ホ短調の第2主題を提示し、再度第1主題と絡まり合い主要部を終える。
ハ長調の即興パッセージによるロマンスを経て、新規に追加した第3主題部に突入。
その後ゆったりした第1主題変奏部に受け渡され中間部を締める。
再度主要部を再現し、第3主題と第1主題、そして序奏が絡み合いフィナーレを築き一筋の流れ星(グリッサンド)と共に全曲を締める。
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確かなことは僕はこの曲を間違いなく愛しているということであり、10年経てもこの曲は僕の大きな一部であるように感じる。
この後も数々の劇伴曲やピアノ曲を創ってはきたが、やはり僕にとって特別なモノなのかもしれない。
しかしこの曲を弾いた10年前に今の自分の姿をどれだけ想像できただろう。
言葉で聞けば10年なんて短いと思えるし、実際振り返ってもそんなに長いものでは無い。
だけど「変わった」ことがあまりにも多すぎて時の流れを大きく感じる。
この曲に対する変わらない思い入れと、10年が変えた自分の環境、この二つを感じながらまた新しい音楽を紡いでいきたいと思っている。